【 君がいる場所 】#21. 文化祭*

君がいる場所

#21.

前夜祭ーーー。
私には未知の世界のことで何が起こっているのか分からない状況に今いる。
校庭に作り出された大きなステージも、そこに立つ学生のみんなも自分とは別世界にいるように感じる。
それと同じく、観覧している学生のみんなもノリノリに踊ったりマイクを持つ学生に答えるように大きな声で叫んでいる。
何というか・・・
その場に来た瞬間にみんながそこに入り込んでしまった、
そんな変な空気に覆われた気がした。
ーーーわたしは、完全にアウェイ状態になってしまった。

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「ごめん、先に帰るね・・・」
呆然と立ちすくむ私の横で盛り上がる環と双葉に向かってかけた言葉が聞こえていたかどうかは分からないけど、
私は完全に場違いでその場にいること自体が場違いに思えて校庭を去った。
時々思うことがあるーーー。
環と双葉は高校ですごく仲良くしてはいるけど、
基本的にノリも悪い私と正反対の二人がどうして私と仲良くしようとしてくれているんだろう、と。
友達に対してこんなことを思うのは失礼だとは思うけど、何か裏があるように思ってしまうのは私の悪いところでもある。
そして校庭を出るまでの間に大勢の中に先輩の姿があるかも探したけど、
バスケ部集団の中に彼の姿を見つけることは出来なかった。
でも・・・何となく会いたいなって思った私は先輩に電話をかけた。

「ーーーはい。」
「あっ、柊です。今、大丈夫ですか?」
「ーーー少しだけなら大丈夫だよ。」
先輩の背後からはステージの音楽と騒々しい人の声が聞こえる、
学校にいることは明らかだった。
「あっ、すいません!まだ学校でしたね、特に用があったわけじゃなかったんで・・・」
「・・・カステラのアレンジがうまく出来なくて、バスケ部の連中でまだ練習してんだわ・・・」
「あれ?でも数名は校庭に見かけましたよ?」
別に催促しているわけでも疑っているわけでもなかったけど、変な意味で取られたらいやだなと思った。
「あいつらは売る方だから・・・。作る裏方は全員ここに残ってる・・・。はぁぁぁ・・・」
「頑張ってくださいね(笑)少し先輩の声が聞きたくなっただけなんで・・・」
「ーーー文化祭終わったらゆっくり会おう。」
「はい、失礼します。」
この会話のどこに恋人感があるのだろうときっとはたから見たら思われる内容だけど、
私はただ先輩の声が聞けた、
文化祭が終わったらゆっくり会える、
そういう期待を持てたからすごく嬉しかった。

文化祭当日、本当は少しでも良いから先輩と一緒に学内を回りたかった。
でも・・・ひどく振られたことになっているし、
私と先輩が一緒にいるところを見られたら同級生はもちろん先輩たちの目も怖い。
ーーーそれに裏方で一生懸命やる、と昨日の夜の電話で言ってた先輩の邪魔はしたくなかった。

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「えぇぇ、衣装可愛いんだけど!いーなーーー!!!」
私たちのクラスはカフェを出し物に選んだけど、こだわったのは制服。
女子はメルヘンにライトピンクとホワイトをベースに、レースだったりリボンだったり・・・
男子が好みそうな制服に仕立て上げた。
男子のホール係は逆にタキシードにして、女子の制服を引き立てる風に完成した。
「環もホール出てきたくなったらいつでも交換するよ?」
「ーーーどっちかって言ったら私はタキシードの方が似合うし!」
ホール担当の双葉や私に羨ましそうに話す環、
スラっとしていてスタイル良いし似合うと思うんだけどなぁ、と思った。

私の任務は午前中2時間だけ、
部活をやっている子がほとんどだから1年生に関しては部活を掛け持ちで文化祭行事を手伝うように言われている。
だから双葉も環もバレー部だけどめちゃくちゃ張り切って手伝ってくれた。
彼女たちだけじゃない、クラスのほとんどの子が協力的だったからこそ成り立って私は午前中だけの任務になった。
「いらっしゃいませ♡」
開店間もなく、私たちのカフェに少しずつ人が見え始めた。
同級生の知り合いだったりご兄弟に友達、知り合いから知り合いへと流してくれて・・・
十分すぎるほど人が集まった。
「あの人、カッコ良くない?」
その中でひとき話題になっていたのは須永君だったーーー。
同じクラスにいたら分からなかったけど、バスケ部で鍛えているし笑うとクシャとなる笑顔が女性にツボらしい。
注文を取りに来た時に笑顔を振りまいて、女性の心を奪っているっぽい。
「すいません、あの店員さんって彼女いるんですか?」
この質問をたった2時間の間に、なんど確認されたんだろう・・・。
「ーーーすいません、分からないです。」
そして何度同じ答えを答えただろうーーー。
須永君に聞けば良かったのかもしれないけど、迷惑だと思っているかもしれないし分からなかった。
帰り際にもメアドをもらったりしていたけど、
完全に社交辞令に苦笑いだったから苦手だったんじゃないかなーーー・・・。

「ーーー・・・帰りてえ。」
「大丈夫?午後はバスケ部の方だよね?それは表に出るの?」
「ーーーいや、そっちは裏方。樹先輩と一緒だよ(笑)」
お客さんが少し去って、私たちはお客さんを待ちながら会話をする。
「ーーーそっか。須永君ってモテるんだね、知らなかった(笑)」
「いやいや、みんな目おかしいから(笑)よっぽど男に飢えてるんだと思うよ(笑)」
「またまた(笑)」
私は須永君の肩に手をかけて軽くたたいた。
「本当だって(笑)」
笑い合うこの時間、すごく楽しいーーー・・・。
先輩とはいつも顔色をうかがうというか、先輩ということもあってやっぱり気を使ってしまって素の自分はまだ出せないでいる。
同級生ってこんなに楽しんだなって思った。
もう少し先輩ともこうーーー近寄れたら良いのに、って思った。

「5名、良いですか?」
ちょうど良いタイミングでお客さんが入店した。
「はい、って先輩!?お友達っすか?」
須永君が対応して、私も須永君も樹先輩の姿を見てびっくり。
ーーーまさか先輩が来るとは思わなかったからね。
「ーーー良いから案内しろ。」
めちゃくちゃ不服そうな先輩は須永君に話しかけ、私の目は見なかった。
ナツさんたちに無理やり連れてこられたんだろうな、という想像はついた。

「ーーーご注文はお決まりですか?」
須永君が気を利かせてくれて水出しも注文も私が取りに行くことになった。
「花ちゃん、すごくかわいんだけど!」
誰よりもナツさんが私の制服を褒めてくれた。
「あはは、メルヘンですよね。ありがとうございます。」
「似合ってるよ、すごく!ねっ?」
「ーーーああ。」
ナツさんの無理矢理の振りに返事する先輩。
「可愛くないね、この男(笑)」
「えっと、ご注文はお決まりですか?」
「あっ、悪い。ーーー全員コーヒーで。」
ナツさんの彼氏の陽介さんが答えた。
「少々お待ちくださいね。」
本当のバイト先なら何かサービスするところだけど、これは文化祭で私が決められることではない。
ーーー残念ながらサービスは出来なかった。

「お待たせしました、コーヒー5つです。出来立てで熱いのでお気を付けくださいね♪」
「バイトでもこんな感じでやってるの?」
「そうですよーーー!でもバイト先の方が美味しいですよ、特にデザート♪」
「そうなの?!」
「はい、だってデザート私が作っているんですもん(笑)」
ナツさんとも女同士だから結構気を使わないで話が出来る。
「じゃあ今度みんなでバイト先に行こうかな。」
「ぜひぜひ来てください、待っていますよ!(笑)」
お会計は全員で200円という安さで驚いていたけど、
学校行事にそこまで高い額はもらわないよーーー。
「ーーー花ちゃん、何時まで?」
「あと30分で終了です!!そしたら自由時間なので帰ります(笑)」
「ーーー後夜祭出ないの?わたしたち、参加する気満々!」
「迷ってたんですけど、出るにしても一度帰ってから・・・」
「じゃあ、私たちと・・・」
「ナツ、やめておけって。柊は疲れているはずだから休ませてやれ。」
多分一緒に回らないかと誘ってくれようとしたんだと思うけど、
樹先輩がそれを阻止した。
ーーー私を気遣ってなのは知っているけど、少しだけ寂しい気もした。

だからーーー・・・
私は絶対に後夜祭に出てやると決めて、
自分の担当が終わったら一度自宅に戻って仮眠を取った。

そして・・・
4時半から始まる後夜祭の時間に合わせてもう一度学校に戻った。

 

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