【 君がいる場所 】#13. 幼馴染2*

君がいる場所

#13.

うちの高校は決してスポーツが強いわけじゃないけど、
かといって弱いわけでもない。
特に樹先輩の所属するバスケ部は監督が厳しいことでも有名であり、
その甲斐あって最近は成績を上げてきているという噂も耳に入る。
基本的に木曜休み、
それ以外は体調不良などの致し方ない場合を除いてはどんな理由であれ欠席は受け入れてもらえない、と須永君が教えてくれた。
だからーーー・・・
実際に樹先輩と形式上付き合っていても、
今までの生活に変化はなくて、
私はほど毎日バイトに励んでいる。

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先輩は私のことが好きで付き合ったわけではなく、
お試しなんだと思っている。
あの時、付き合ってみるか?、と言われたのを今でも忘れないし、
好きでもないですよね?という言葉に否定をしなかった。
ーーー多分、身近にいた私が先輩を好きになってどんな子なのか知りたかったのかなとうぬぼれてはいる。
だってバスケで充実している先輩に暇つぶしで私と付き合うとは思えないから・・・。

先輩に好きになってもらう努力も大事だけど、
今は先輩に嫌われないように気を使っている自分がいるのは否定できない。
ーーー先輩に迷惑が掛からないように会いたいとか寂しとかも言わないし、
連絡もこちら側から発信することはしていない。
バスケに集中しなきゃならない今、私のことで重荷に感じて欲しくないからね。
それに連絡自体先輩も苦手かなと思ってて、実際に向こうからも連絡は来ない。
だから最後に会った木曜日から一度も連絡を取り合っていないことになる。

それよりも私はナツさんとの方が連絡を取っているし、
バイトの後に一度だけご飯も一緒にした。
ナツさんは樹先輩と同じ学年だし私の一つ上、
また性格的にすごく明るくて話しやすいから結構自分のことを話してしまう。
ーーー突然できたお姉ちゃんみたい、そんな感じだ。

そして・・・
バイト終わりの水曜日、また一緒によるご飯を食べることになった。
少しでも私の負担を減らしてくれる心使いがすごく嬉しくて、
その言葉に甘えて私たちは私の家の最寄駅にある商業施設内での夜ご飯にした。
「ゴメン!ーーーこいつら付いて来ちゃって(笑)」
ナツさんだけ来るもんだと思ってたら、なぜだか樹先輩の幼馴染の人たちも一緒に来た。
先日自己紹介してくれたけど忘れていて、
もう一度してくれた。
樹先輩と小学校からずっと同じクラスだった陽介さん、幼稚園から一緒の蒼太さんと真さん。
陽介さんはナツさんと付き合って3年だって、凄いなぁと思った。
2人のやり取りを見ていても遠慮がなくて、私と樹先輩の関係ではまだまだ届かないなと実感する瞬間でもあった。
蒼太さんは樹先輩と同じくらいの長身で同じく自分の高校でバスケをしていると言ってた。
性格は真逆ですごく明るくて話しやすい人柄だと感じた。
真さんは小柄で寡黙なタイプだったけど、人をよく観察している人なのかなと感じた。
「で、部活終わったら樹も呼んだから!」
「えっ!!!」
陽介さんの一言で固まる私、若干顔が引きつっていたのではないだろうか。
「あっ、ダメだった?」
「い、いえ!先輩に会う心の準備が・・・髪の毛変じゃないですか!?」
「ーーーわははは!何それ、花ちゃん面白いんだけど(笑)」
私のてんぱりに一番笑ったのは蒼太さんだった。

「そういや、蒼太、あんた宿題終わって来たの?いつも忘れてるじゃん(笑)」
「あっ!ナツに聞こうと思って持ってきたんだ!」
蒼太さん・ナツさん・陽介さんは同じ高校に通っているようで、何とみんな同じクラスなんだって。
「ーーーこいつに聞いても・・・(笑)」
そこに突っ込んだ陽介さんに対してつかさずナツさんがケリを入れたようだ。
「ちょっと、失礼じゃない!?」
「いてーな。蹴ることねえだろうよ、これでも彼氏のつもりなんだけど?(笑)」
こういったやり取り、羨ましいなって思った。
「ーーーWillとCanの使い方が分からん、まったくわからん。どうやったら分かるか教えてくれ・・・」
「あぁぁ、その宿題ね!私たちもさっき手こずって結局、適当にやった(笑)」
蒼太さんは宿題と思われる紙切れをテーブルに広げた。
” WillとCanを使った文章を疑問形も含めて、自分の経験から3つずつ作ってくる “というのが宿題の内容っぽかった。
「見せてもらっても良いですか?」
「えっ、良いけど・・・1年では習わないし分からないかと・・・」
蒼太さんのその言葉に私は耳も傾けず、少し考えてみた。
「蒼太さんは週末何か予定ありますか?」
「えっ・・・ない(笑)寝て過ごそうかな、と・・・」
「まずwillの文章から考えるとwillとcanは同じような意味でもニュアンスというか使い道が違くて、willは自分の意思を表すときによく使われるんです。今の蒼太さんの寝て過ごすは意思になるので、I will sleep whole day this weekends.で通じます。Canは可能性があるときに使うことが多いので、蒼太さんは明るくて人を元気にさせることが出来ると思うので・・・I can make people happy.とか簡単な英語だとこう使えると思います・・・」
「す、すご・・・」
「他には!?三つ考えなきゃならなくて・・・」
「ーーーそれくらい自分で考えろ(笑)」
蒼太さんたちと和気あいあいやっている時に聞こえた低い声ーーー。
樹さんが来ていることに誰も気が付かなかった。
「あっ、部活お疲れ様です!」
「ーーーお疲れ。」
「何か食べますか?飲みますか?」
「ーーー夕飯は家で食べるから、飲み物だけ。」
私は先輩にメニューを渡した。

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「花ちゃん、疑問形はどうやって作れば良い?」
「おぃ・・・」
樹先輩が割り込もうとしたけど、私は笑顔でそれを交わした。
「蒼太さんは夏は何をすることが好きですか?」
「ーーー海!海に絶対に行きます!」
「それを先生に問いかけてみるとか…」
「どうやって・・・?(笑)」
「蒼太・・」
「Will you go to the sea this summer?で良いんじゃないかなと思います。自分は行くつもりだけど、先生は行く予定、つまり行く意思があるのかって聞いているんです。」
「Canを使った疑問文は・・・?」
「お前なぁ・・・」
「Can you give me a snack?、Can you tell me what the most popular food in your country?とかですかね・・・」
ーーー先輩は非常に迷惑そうにしていたけど、
私は蒼太さんにほんの5分教えることは全然嫌とかなくて、むしろすごく楽しい時間を過ごせたと思った。
「ーーーつまり簡単に言うとwillは相手や自分の意思を問う時に使う、canは可能性を秘めたときに使うって認識で合ってる?」
「合ってます。」
「ーーーすごい、すごいよ、花ちゃん!」
蒼太さんは自分の宿題が終わったことに感激して私の手を握ってお礼を言った。
「わたし、4歳から10歳までカナダに住んでいたんです。だから英語は得意な方で・・・」
先輩も初耳と言った感じに、すごく驚いた表情をしていた。
「すごいな!!!ーーー樹も英語苦手だし、教えてあげたりしたら良いのに(笑)」
「いえ、そんな・・・(笑)」
「ーーーもう21:45だ、お前ら明日の朝は起きられるのか?」
「えっ!!!やだ!わたし、宿題やってないし洗濯もしてないので帰ります!」
「え、洗濯・・・?」
みんなの疑問を無視して私はお会計をして慌ててお店を出た。

「柊!」
「あっ、先輩・・・」
「さすがに暗いから送る・・・」
「でもすぐすこですよ?それよりお友達と帰った方が・・・」
「ーーー送ったらすぐ帰る、あいつらも駅で待ってるよ。」
「そっか、ありがとうございます。」
そしてしばらく沈黙が続いたーーー。

「ナツたちがゴメンな、この前会わせた時から嫌な予感はしたんだよな(笑)」
「いえ、私こそでしゃばる形になりすいませんでした。」
「ナツに誘われたんだろうけど、疲れていたりしたら断れよ。」
「ーーー大丈夫です、先輩の友達だから私も大切にしたいです。」
「何だそれ(笑)」
でもふと思ったーーー。
もしかしたら先輩は自分の友達と私が会うの嫌かもしれない、って。
付き合って間もない私が先輩の友達と遊んでたら気分悪いのかなと思って、
少しだけ控えようと思った。
「でも少しだけでも先輩に会えて嬉しかったです。明日は部活お休みですか?」
明日は木曜日、唯一休みの日なはずだ。
「あっ・・・休みなんだけど。クラスのやつらとバスケする約束してて・・・悪い。」
「いえ!私も明日はリハビリで学校休むのでバイトも休みだからと思っただけなので。」
「ーーー悪いな。」
唯一会える木曜だからと言って、
決して私たちが会えるわけではないということを思い知った瞬間でもあった。

「今日はありがとうございました。」
「ーーー宿題とか、頑張れよ。」
「はい!お疲れ様でした!」
私は元気よく先輩が見えなくなるまで手を振り続けた。

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