#12.
木曜日ーーー、
私は朝から先輩とどこに行こうかなとドキドキで、
朝からきっとソワソワしていたと思う。
・
先輩が昨日メールくれたように、
放課後は先輩の最寄りの駅の方へと向かう。
私の最寄りは学校と同じだから、
どう考えても待ち合わせには無理があると判断してくれた。
「あれ?柊って電車だっけ?」
「ううん、今日は出かけるんだ!」
ーーー偶然帰り道が一緒になった須永くんと横並びで歩く。
「もしかして・・・先輩と?」
ニヤニヤしている須永くん、聞きたいんだろうなぁと思った。
「聞いたの?(笑)」
「月曜にご丁寧に電話までもらって聞いたよ(笑)良かったな!」
「ありがとう、でも好きになってもらえるように頑張らないと!」
「大丈夫っしょ(笑)」
ーーー同じ電車に乗ってバイバイと途中下車する私。
友達とこうして電車通学するのも悪くないなと思った。
・
電車を乗り継いで先輩の最寄りの駅で降りると既に私を待ってる先輩の姿があったーーー。
ただ立ってるだけでもカッコいいなぁと一瞬見惚れた。
「待たせてしまってすいません!」
「ーーーおお、来たか。」
「で、どこに行きますか?」
先輩と横並びに歩いて、今度は地下鉄に乗ろうという話から地下鉄の改札まで向かう。
「今、ここに向かう途中に須永くんに会ったんです。私と付き合ってることをお話しされたって聞きました。」
「ーーー君と別れてすぐに部活のことで用があり、ついでに話しておいたよ。須永は信用できるやつだからーーー。」
だけど、須永くん以外に口外はするなとも言われた。
地下鉄に乗り数駅、
かれこれ学校を出てから1時間が経過している。
「ーーーうわぁ、初めてこの駅降りたけど賑わってるんですね!」
「幼馴染がここの駅に住んでて、時々来るけど好きそうだと思って。」
可愛い雑貨屋が並ぶ商店街、
右も左も私が好きそうな店ばかり。
「見て見て、可愛くないですか?これとか・・・環とか似合いそうなピンだなぁ!双葉ちゃんはこっちかなぁ?」
夏が近いからか向日葵柄が多い中、私が目に入ったのはプルメリアの色違いのピン。
これを3人で揃えても可愛いなって思った。
「このゴムも可愛いですね!」
悩ましきものがたくさんあったけど、とりあえず買うのは保留にした。
日頃から節約してて自分のためにあまり使わないのもあるけど、
また他に可愛い物があるかもしれないと思ったから。
「先輩は何か見たいものとかないんですか?バスケ関係とか?」
「ーーー気にしないで良いよ。」
「いつも幼馴染さんとは何してるんですか?」
「あー、商店街のはずれにバスケコートがあって、そこでバスケしてる。」
「ーーーそこに行ってみたいです。」
「えっ?楽しくないぞ?」
「先輩が普段してることを見たいなって思って。ダメですか?」
「ーーー少し歩くから足が痛くなったら教えて。」
「はいっ!」
ーーー本当はね、付き合ってるなら。
手なんて繋いでみたかったけど、
それよりも先輩の横に並んで歩けていることの方が嬉しかった。
「学校の近くにも大きなバスケコートあるのをこの前見つけて、先輩が前何教えてくれたのってきっとそこですよね?」
「公園の奥だろ?」
「そうです。」
「最近はもっぱら学校の方に行ってるよ。」
「ーーーこの前、散歩がてら行ったら先輩らしき人がいたんですよ(笑)でも確証なくて声掛けられなかったけど、男女混ざってみんなで楽しそうにしていました。先輩でした、かね?」
「ーーー時々クラスの女子が来てやるから、その時かもな。」
「ーーーそっか。」
私は先輩にバレないように少し俯いて拳を握った。
だって先輩が1番大好きなバスケをクラスの子と一緒に楽しめるって私には絶対出来ないことだから。
ーーー自分の好きな人が1番好きなことを一緒に楽しみたいって思うもんね。
それにもしかしたらその何人かの女性たちは先輩のことが好きかもしれないし、
変なことを考えたらキリがないからやめた。
「ーーー樹!来たのか!?久しぶりじゃん、こっち来るの。」
「部活あるし遠いからな(笑)」
バスケコートに着く直前に突然先輩の名前が呼ばれた。
ハッとしてその方向を見ると男性3人に女性1人がこちらに向かって歩いてきた。
「なになに?デートですかぁ?見せびらかしに来たわけ?」
「ちげーよ。高校の後輩、このコートを見たいというから連れて来たんだよ(笑)」
・・・高校の後輩、
正論だけど地味に傷つくという。
「一回やってく?」
「いや、今日は・・・」
「先輩、やって来たらどうですか?わたし、そのベンチで見てます。」
ーーー普段見れない先輩のバスケを見たいという気持ちが強かったけど、
純粋に友達同士でバスケをやってもらいたいという気持ちもあった。
「・・・一回だけ、な。」
学ランの上を脱いで、先輩は仲間たちとバスケを始めた。
・
やっぱり先輩はバスケをしている時が1番イキイキしていると思う。
学校で見かけても眠そうだったり機嫌悪いのかなと顔色を伺いそうになる時もあるけど、
バスケをしている時は何も恐れる物がないというかーーー・・・。
すごく楽しいんだな、ってのがこっちにまで伝わってくる。
「ーーーあいつと付き合ってどのくらいなの?」
私もそんな先輩の姿を見るとホッコリして微笑みながら見ていたと思う。
「実は・・・今日が初めてデートで。」
「はぁぁ?初デートでココ?!あいつ大丈夫?(笑)」
私の隣にやって来た唯一の女性。
長身で細くてショートカットのキリッとした一重が印象の女性。
「わ、私が見たいって頼んだんです!先輩の幼なじみがいる駅だと聞いたんで普段何してるのか知りたくなっちゃって・・・」
「うちらがいるって分かってて連れて来たんだろうし、樹も可愛いとこあんじゃんね(笑)」
「ーーーいやぁ、分からないですけど(笑)」
私の周りにはいないすごいサバサバした女性だけど、
話しやすいというかーーー。
人見知りの私が普通に話せていることがすごかった。
「わたし、足が悪くて運動が出来なくて。だからきっとこの先付き合ってても樹先輩をあんな笑顔には出来ないから来て良かったです!素敵な仲間なんですね!」
「な、なんか辛いこととかあったら言っておいで!わたし、樹が赤ちゃんの時からの幼馴染だから1番付き合い長いし!地元だとこのメンバーでしか遊んでないから変な虫もいないから安心して!笑」
本当に良い人だな、と思った。
私の両肩を掴んですごい励ましてくれているように感じた。
ーーーそして先輩の幼なじみだというナツさんと連絡先の交換をした。
「ありがとうございます、心強いです。」
私はナツさんに抱きついたーーー。
「えっ、えぇぇぇーー。恋に落ちちゃうよぉ(笑)」
ナツさんはふざけているけど、
優しく私の背中をトントンしてた。
ーーー人に背中を優しく叩いてもらうなんて、
幼少の時におばあちゃんや葵おばさんに寝かしつけしてもらった以来だと思う。
こんなにも優しい気持ちになれるなんて、
人との触れ合いは大事なんだなと思った。
・
「ーーー柊を返してもらおうか。」
「げっ!返すよ、返すよ!」
突然戻って来た樹先輩によって私たちの抱擁は離された。
ーーー嬉しかったのにな、
気持ち良かったのにな、と少し悲しかった。
「ーーーそろそろ行こうか。」
「花ちゃん、また会おうね!」
ナツさんに笑顔でそう言われて、私は笑顔で返した。
「ーーー先輩とナツさん、1番付き合いが長いと聞きました!」
「親同士が元々友達でさ・・・」
と先輩の親の話を教えてくれた。
高校時代の親友だったお母さん同士、
あまりにも仲良すぎて家を隣に建てたんだって。
運命なのか妊娠の時期もほとんど一緒で、
共働きで一人っ子のナツさんをよく先輩のお母さんが面倒見ていたと。
「俺からしたら友達と隣に住むなんてありえねーけど。」
先輩はそう言ってたけど、
お母さんのこと否定もしてないし、
きちんと認めているのは偉いなと思った。
・
「ーーー今日はありがとうございました。」
「楽しかったよ。本当に送らないで良いのか?」
「はい!帰る電車も思い出に浸れるから楽しいんですよ?(笑)」
バスケコートを先輩と出てから、
また雑貨巡りをしていた私たち。
いろいろ悩んでいた私にひとつだけ似合いそうだからと先輩がピンを買ってくれた。
「これ、大切にします!ありがとうございました!」
やっぱり優しい先輩の一面が多くて、
彼に恋せざる得ないと思った。
「ーーーおお。」
「じゃ、また明日学校で!」
私は元気よく改札に入った・・・ーーー。
もうすぐ7時になる、
そんな時間まで先輩と一緒にいれたことがとても幸せだった。
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