【 君がいる場所 】#11. 大逆転*

君がいる場所

#11.

週末を使った土曜日、
私は久しぶりにおばあちゃんの家を訪ねた。

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おばあちゃんの家は理事長だけあってすごく大きな家だと思うーーー。
そこに母のお姉ちゃん家族と一緒に住んでいるおばあちゃん、
見ている限りではすごく良好な暮らしをしているんじゃないかなと思う。

「ーーー花から来るなんて珍しいなぁ。」
私と話すときのおばあちゃんは理事長の顔ではなくて、優しい祖母の顔になる。
「うん、相談したいことがあって・・・」
「学校のことかい?ーーー校長から少し話は聞いたけど、足は大丈夫だったのかい?」
「うん、そのまま病院に行ったら健太先生にめちゃ怒られたけど・・・」
「当たり前だよ、気をつけなきゃダメだよ。で、話っていうのは?」
私は母の姉の葵さんが出してくれたお茶を一気飲みしておばあちゃんに今の気持ちを伝えた。
ーーー学校に馴染めていないこと、
クラスの女の子と同じ人を好きになったこと。
その人とやりあってしまったこと。
カナダに戻りたいと思っていること。
ーーーつまり色んな理由をつけて学校をやめたいと言った。
その費用を出してもらえないか、というお願いに来たと。
「言いたいことは分かったよ。でも・・・花は本当にそれで良いの?」
「え?」
「相手が誰かとは立場上聞かないけど、その人にもう一度きちんと会って話した方が良いんじゃないか?今の花の話を聞いてたらカナダに逃げるようにしか聞こえないよ。そんなことしたらカナダに行って同じことがあってもまた逃げることになるんじゃないのかい?」
ーーーおばあちゃんの言ってることはごもっともで、私は何も言い返せなかった。
学校を休んでまでいろいろ考えたのに、
結局それが白紙に戻った形になってしまった。

週明け、私は須永君や双葉ちゃん、環にメールを返信できなかったことを謝罪した。
「本当に心配したんだからね!」
「ゴメン、気を付ける・・・」
寝て過ごしたということにして真っ白になってしまった私の事情は話さなかった。

学校に馴染めないーーー・・・
私はおばあちゃんにそう伝えたけど、本当にそうなのかな?と環を見て思った。
こうして心配してくれる友達が1人でもいる、
色んな事情を抱えている私を話せる時が来るまで待ってくれる友達がいる。
事情を知っているからこそ危険なことをしている時に止めようとしてくれている子がいる。
それだけで幸せなことではないのかな、と思った。
ーーー馴染めてないと思っているのは自分だけで、心を開いていないのは自分の問題なんではないかと思った。

「ーーー樹先輩がすごく心配してて、登校したら連絡欲しいって言われてるんだ。」
須永君は私にそういった。
「・・・そういう優しさが諦められないって分かってないんだね(笑)」
「ーーーあの人、すごい優しいから、見た目は怖いけど。心配してるから連絡の一つ入れてあげてよ(笑)」
「・・・分かった。教えてくれてありがとうね。」

今日は月曜日ーーー、
イチかバチかの可能性をかけて私はバイト終わりに学校の最寄り駅で待つことを決めた。
以前偶然会った時のように、
会えると信じて・・・。

「柊さん?」
ーーー信じる者は救われるという言葉があるように、
きっと本当に報われるんだと思う。
「お疲れ様です。須永君に心配してくださってると聞いて待っていました。」
「・・・連絡くれればもっと早く来たのに。」
「いえ、そういうわけには・・・」
元々は須永君のために交換した連絡先、
私と先輩が連絡を取るためのものじゃないし、
今更だけどおこがましいんだと思った。
「ーーーまだ正樹とか三年の先輩とか来ると思うから、ちょっと移動しても良い?」
気まずそうに私に言う先輩は、
私の背中に手を添えてちょっと先にあった公園に入った。
ーーー夜8時過ぎに高校生二人がいても大丈夫なのかな、って思ったけど。
少しだから大丈夫だろう、と私はベンチに座らせてもらうことにした。

「ーーー先輩、先日はご迷惑をおかけしてすいませんでした。」
「・・・足は大丈夫だったのか?」
「はい、大丈夫です。」
「・・・なら良かったけど、無理はすんなよ。」
「優しいですね、先輩は(笑)でも・・・もう優しくしないでくださいね。」
「・・・優しいつもりはないけど。」
「ーーーわたし、先輩に振られても諦められなくて平井さんとの勝負で負けるの分かってたから諦めるきっかけが欲しかったんです(笑)でもあの日、先輩の言葉で諦める決心がつきました!ーーー今後先輩を見かけても挨拶もしません、連絡先も消します。いつか先輩よりも素敵な人と出会ってこの恋が良い思い出になるように頑張り・・・」
私が先輩を諦める宣言をしているのに、
突然何かふわっという感触が肌に感じられて自分でも驚いた。
「・・・なあ、付き合ってみるか?」
ーーー耳元で聞こえる先輩の声がくすぐったい。
ああ、そうか。
私、今抱きしめられているんだーーー・・・。
「えっ?何言って・・・」
私は先輩の腕の中から抜け出そうとするも力及ばずで全く抵抗できない。
「・・・付き合ってみるか?」
「でも先輩、私のこと好きじゃないですよね?迷惑ってこの前言ったじゃないですか・・・」
「ーーーあの場を抑えるために言いすぎた。ーーーどうする?」
知ってるくせに、ノーと言えないことを。
「つ、付き合います!よろしくお願いします!」
私は抱きしめられてる先輩の背中に手を添えた。

「とりあえず今日は遅いから帰りましょうか!」
しばらくしてなんとなく賑やかになってきたのを察した私は樹先輩に切り上げるために言葉を発した。
「ーーー木曜バイトか?」
手帳を見て珍しく木曜に入ってないことに喜ぶ自分。
「ないです。会えそうなんですか?」
「ーーー会おうか。また連絡取り合おう。」
また明日、という言葉を残して改札に入って行った。

あんだけ迷惑と言っておきながら、
男心も読めないと思った。
ーーーそして付き合う瞬間も淡白だなと思った。

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