【 君がいる場所 】#10. 女同士の勝負*

君がいる場所

#10.

それから1週間、
また1週間と時は経ちーーー。
自然と嫌な噂は消えた。

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「見て!消防士って制服だけでもカッコいいよね!」
この学校はみんな暇だと思うーーー。
毎日本当に話題が違う。
昨日は自分の好きな人の話だったのに今日は全く違う内容だったりと話題豊富な女子が多い。
実際に今日は朝から消防士の皆さんが先日の爆発音とサイレンについての確認作業をしてくれているので話題で持ちきりだ。
でも私もそこはちょっと思うかな・・・。
警察官や消防士などといった制服を着用する職業はまだ高校生になりたてのわたしたちから見たらカッコよく見える。
今日いるのはオレンジ色の作業服を着用した消防の人たち。
ーーーうん、確かにカッコ良いなぁと窓から見た。

3年生のいる新設された西棟全部を見てから食堂、職員室と少しずつ東棟に近づいて来る。
わたしたちは通常授業だ。

今日も担任にプリントを持って来るように頼まれた私は先生と半分ずつ一緒に職員室まで運んだ。
ーーーそして嫌でも見つける樹先輩の姿。
どうやら部活の顧問と話しているようで、
すごい真剣に何かの紙を見ている。
わたしはーーー、プリントを置いて職員室を後にする。

樹先輩に振られて噂があったあの日から・・・。
まともに先輩と会話していない。
噂が広まった責任もあるしきっと迷惑かけたと思う。
それに振られた身としてはあまり先輩と話すのは良くないと思ったから前までのように会釈することもせずただ俯いて気づかないふりをし続けている。
ーーー少しでも私が先輩と交流持ってしまったら、
また迷惑がかかるから。

恋って凄い力があってーーー。
告白する前、片思いもほんの短い期間だったけど学校に行くのが毎日楽しかった。
先輩に会えると思うと足取りが早くなったりもした。
・・・振られた今は逆だ。
先輩に会うのを避ける自分がいる、
クラスの中では平気なフリをしている。
ただ人を好きになるだけなのに、
こんなにも天と地の差があるのは驚きだ。

「ねぇ、ちょっと付き合ってくんない?」
放課後、私はりぃさちゃんに呼び出された。
呼ぶ相手間違えてない?
「わたし?」
「そう、柊さん、あなたです。」
ーーー何だろう、と疑問に思いながら私は彼女に付いて行くと体育館だった。

体育館倉庫からバスケットボールを持ち出した彼女は私にそのボールを投げた。
「わたし、樹先輩のことが好きなの。」
「えっ?」
動揺を隠せずに焦って返事してしまった。
「ーーー柊さん、諦めてないでしょ(笑)私も何度も告白しても受け入れてもらえない。だから私と勝負しない?」
言ってることが全然分からなくてキョトンとしてしまった。
「入学した時から私はあなたが嫌いだった。弱々しくて守って的なあなたが。なのにどうしてあなたと同じ人を好きになってしまったのか・・・。でも良い機会だと思った。」
「良い機会?」
「私が負けたら柊さんへの嫌悪感も先輩への恋心も全部諦める。あなたが負けたら先輩を諦める、そう約束して。」
何と自分勝手な・・・
そう思ったけど、正直にいうと私も先輩を諦める何かのきっかけが欲しかった。
あの日から何もないけどーーー・・・
自分が避けてはいるけど、
好きでいることを諦めるのは出来なかった。
「ーーー何をすれば良いの?」
「先に3ポイント取った方が、勝ち。奪い合い。」
ーーー大丈夫かな、と不安は大きかった。
でもりぃさちゃんの本気の気持ちに負けてはダメだと思ったから私はそれを受け入れた。

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私たちの戦いはあっという間にギャラリーが出来て、
男子も女子も周りに集まっていた。
すぐにりぃさちゃんに先にポイントを入れられた。
私は自分なりに彼女からボールを奪ってゴールするも、
もともと運動が苦手な自分はすぐに彼女に取られてしまう。

「柊!」
りぃさちゃんにボールを取られたことによる衝撃でバランスを崩して尻もちをついた私は須永くんの声にハッとした。
私は自分で立て直して、りいさちゃんとの勝負を再開した。
2点入れられたーーー・・・。
わかってるんだ、勝負は。
勝ちっこないって分かってるんだけど。
ーーー悔しくて涙が出てきたけど必死に拭って彼女からボールを奪う。
でも奪ってもね、自分のコートに向かうのが遅すぎて後ろから彼女に押されてまた転ぶーーー。
「柊!やめろ・・・!頼むから・・・」
須永くんはずっと叫んでる、
ジャージ姿だし、
きっと部活の最中なのにずっと叫んで止めるためにここにいる。
「わたし・・・負けると思うけど先輩に対する気持ちは本物だったから。」
溢れる涙を堪えて、りいさちゃんを睨みつけた私。
そして最後の挑戦、と思い立ち上がった時・・・
「ーーーいい加減にしてくれないか。」
どこからそんな声が出るのだろう、
というほど黒く暗い声が体育館の中に響き渡った。
それは・・・
それは・・・
樹先輩の怒りに満ちた声だった。
「こんなことされてもオレは気持ちには応えられない。何度伝えたら理解してもらえるんだ?」
ーーー樹先輩はきっと私たち2人に言ってる。
「だって先輩・・・」
「迷惑なんだよ、君たちのそういう気持ちが。」
りいさちゃんの言葉を遮り、
本当に怒り狂ったかのように目つきも怖く低い声で先輩は言った。
ーーーこんなに怖い先輩を見たのは初めてだった。
でもね、その瞬間に・・・
この人を好きでいちゃダメなんだ、そう思ったんだ。
「すいませんでした・・・」
私はその場を立ち去ったーーー。
自分から誘った勝負ではなかったにしろ、
乗ったのは私。
りいさちゃんと同罪なんだーーー。

2日、私は学校を休んだーーー・・・。
須永くんからも環からも双葉ちゃんからもメールをもらった。
ーーーなぜか樹先輩からも着信を受けた。
でもその全てに応答することが出来なかった。
・・・どうしても考える時間が必要だったから。

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