【 君がいる場所 】#08. 告白*

君がいる場所

#08.

迎えた体育祭ーーー、
私は前日に先生に欠席することを伝えた。

その日は午後からリハビリ、
午前中はのんびりと過ごした。
この日はもうすぐ梅雨を迎えるのか、
気温の割に湿度が低くてもう半袖で過ごせるくらいの暑さだった。

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私も半袖の水色のストライプワンピースを着て、
白のカーデガンを羽織った。
昔背負った火傷の痕が見えないように、肌を隠す。

体育祭がやってる運動場も通り道だし、
クラスの子たちの頑張ってる姿も少し見たいから少し早めに家を出た。
錦糸公園の一つのグランドを借りて行われている体育祭、
色んな方角から大きな声が聞こえてくる。
うちの高校の体育祭だけじゃなく、
仲間内で遊んでる人だったり母と子供、友達同士と色んな人がこの大きな公園に遊びにきているんだと思う。
その先を抜けたら私の病院があるーーー。

大袈裟に見学するつもりはなく、
通行人のふりをしてチラッと見れたらなと思ってる。
それは私と普通に接してくれる子たちもいるけど、
逆に私に不信感を抱いてる子もいるのは否定出来ないから。
1番賑わっている方へ進行方向を変えて、ネット越しから中の様子を見る。
広すぎて・・・遠すぎて誰がどこにいるかなんて分からないけど、
アナウンスでちょうど今からお昼の時間だということは分かった。
ーーー数人で集まってお弁当を食べる人、
1人で食べていたり先生や友達と記念撮影をしている人たちが見えた。
きっとあの中にも樹先輩と一緒に写真を撮っている人とかいるんだろうな、と思うと少し胸が痛んだ。
私も・・・体育着での先輩とのツーショット欲しかったな、と贅沢に思ってしまった。
しばらくみんなの様子を見ていたけれど、競技をしているわけでもないし私はその場を後にして病院に向かった。

リハビリは特に問題もなく、健太先生といつも通りに和気藹々となりながら進めることができた。
ーーーリハビリを行う中で思うことがある。
私みたいに小さい頃に追った怪我が原因で継続的ではなく一時的に感覚が鈍ることがあるのだろうか?
そしてそれを治すために一生懸命リハビリをしているけど、これに意味はあるのだろうか、と。
「花ちゃん?」
「あっ、すいません!」
「・・・2週間後の予約を取って帰ってね。」
「はい、ありがとうございました。」
ーーーリハビリをすること3時、
約数時間のリハビリを終えて、私は2週間後の日曜日の予約が幸いにも取ることが出来た。

自宅に戻るには同じ道を歩いて駅まで向かい、
そこから学校の方向へと電車に乗る。
私は先ほどと同じように錦糸公園の中を通り、グランドの前を通る。
ーーーチラッと見るとちょうど終わった頃なようで、
次々と生徒が帰宅に向かっているのが見えた。
その中に見えた樹先輩の姿・・・。
今度ははっきりと見えたし、絶対に間違いじゃない。
ーーー 1年生はもちろん、先輩方とも写真を撮っている。
羨ましいなぁ、と正直に思った。
体育祭にも出ていない私が先輩と写真撮る資格なんてないし、
私は自分の足元で拳を握りしめてその場を後にした。
ちょうど帰宅に向かっている生徒たちと同じ方向で会うのが嫌だったので、
私は1本道をそれて別の敷地内通路を歩いて自宅に戻った。

ーーー気持ちが情緒不安定の時は特に人が恋しくなる。
誰かにおかえりって言って欲しいと思う。
誰かの笑顔が見たいと思う。
今日もーーー・・・
きっと心のどこかで誰かに気がついて欲しかったんだと思う。
孤独・・・それがこんなにも寂しいだなんて。
その夜は涙が止まらなかった。

月曜日ーーー。
昨夜あまり寝付けなかった私は寝坊をして、
朝バタバタで自宅を出た。
「あっ・・・おはようございます。」
だから正門のところで樹先輩と正樹先輩に会った。
「ーーーおはよう。寝坊?髪の毛はねてるよ?笑」
私をからかう正樹先輩に赤面しながら、
私は教室に駆け込んだ。
実は、樹先輩に対する気持ちが恋心だと認識してから私は先輩を見つけては隠れるようになった。
だからなんだか久しぶりに樹先輩を見た気がした。
会えて嬉しいと思う自分と、
会おうとしなければこんなにも接点がないことに凹む自分がいた。

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「柊さんーーー・・・」
昼休み体育館を訪れ、1人でお昼を食べた。
いつも一緒に食べる環と双葉ちゃんが今日は部活のミーティングで呼ばれちゃったから。
「え、先輩・・・?」
でもそこには先約がいて・・・
「お弁当?」
「ーーー先約がいましたね。すいません・・・」
屋上を出ようとしたけど、
先輩が私の腕を引いて彼の方に引き寄せた。
えっ、と彼を見上げるーーー。
「一緒に食べようか。ちょうど話をしたいと思ってた。」
先輩が座る向かい側に座り、彼の食べるお弁当を見つめる。
ーーー美味しそう、きっとお母さんの手作り。
「すごい美味しそう!お母さんの手作りですか?」
「そう。ーーー柊さんは?」
「わたしはーーー・・・自分で作ってます。」
あえて親のことは出さずに自分で作ってることを伝え、お弁当箱を開けた。
「これ、自分で?凄いな!」
先輩は私の前だとよく笑うと思う。
学校にいる先輩と私に見せる先輩の姿が違う人に見える時が時々ある。
「食べますか?わたし、少食なんで・・・」
先輩にお弁当箱を差し出すと嬉しそうに受け取った。
さすが食べ盛りの高校生、
それに部活もやってたらたくさん食べられるよね。
「ーーー屋上にはよくくるの?」
「いや、時々です。空を見てると気持ちがよくて・・」
私は空を見上げたーーー。
お父さんお母さん見ていますか・・・。
今、私はこんなにも孤独を感じて、
母さんたちに会いたいです。
そんな思いを寄せながら見ているとフッと私の頬に先輩の手が触れた。
「ーーーえっ?」
「悪い、あまりにも涙が美しくて・・・」
その言葉で私は自分が涙を流してることに気がついた。
私は先輩の手に触れたーーー・・・
そしてその触れた手で流していた涙を拭った。
「ーーー好きです。」
「えっ?」
「わたし・・・先輩のことが好きなんです。」
私の言葉を聞いて、無表情だった先輩の顔に少しの曇りが見えた。
「ーーーゴメン。柊さんは良い子だと思う、だけど学校の子と付き合うつもりはないんだ。」
ハッとしたーーー。
何なり行きで告白してんの、私・・・。
「す、すいません!忘れてください!」
お弁当を早々に片付け、足早に屋上を出ようとしたその時ーーー。
ドカーンという大きな音が屋上に響き、
その音と同時に学内のサイレンが鳴った。

ーーー怖い、そう思った瞬間。
私の体は驚くほどに震え出した。

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